伊坂幸太郎の「マリアビートル」を読みました。
いや~、めちゃくちゃ面白かった。
文庫本で600ページ近くもある長編小説だけど、あっと間に読んでしまった。
新幹線が見える喫茶店で(笑)
今回は、マリアビートルの感想と、
物語の主人公の一人である「王子」が最後はどうなったか?
について考えてみます。
これからは、ネタバレが含まれるので、
まだマリアビートルを読んでいない場合は、絶対に読まないで下さい。
もう一度、言います。まだ読んでないなら、絶対に、この先は読まないで下さい。
実際に、マリアビートルを読んだ時のドキドキハラハラ感が半減していますので。
まだ読んでいない場合は、自信をもっておすすめするので、 アマゾンで買って、本編を読んでから、このブログ記事も読んでみて下さい(笑)
【Amazon】>>マリアビートル (角川文庫)
目次
マリアビートルの感想!【ネタバレ注意】
それでは、マリアビートルの感想を。
物語を読んでいる前提ですので、あらすじなどは割愛します。
物語の舞台は、東北新幹線。東京―盛岡間。
私も、仕事で何度も東北新幹線に乗っているので、車内の情景や、停車駅までの時間の間隔など、リアルに思い浮かべながら、物語にのめりこんでいきました。
例えば、東京駅から上野駅までが、およそ5分。
さらに、上野駅から大宮駅までが、およそ20分。
実際、東京駅から大宮駅までは、乗っていれば、あっという間に着いてしまうけど、この間にも、木村、蜜柑、檸檬、天道虫(七尾)、王子の思惑や行動が交錯し、実に、物語の3分の1が(ページ数にして)費やされている。
大宮までで、よくぞここまで描けるものだな~、と感心しつつ、ページをめくる手を止められないほど、のめりこんでいく。
私は、もともと、大沢在昌や馳星周などのハードボイルド小説が好きなので、「グラスホッパー」や「マリアビートル」は、読む前から楽しみで仕方なかった。
特に、「グラスホッパー」「マリアビートル」のように、複数の主人公の主観から描く手法が好き。
特に「マリアビートル」は、東北新幹線が東京駅から盛岡駅に着くまでの、およそ3時間という短い時間で物語が展開する。(回想シーンもあるが)
物語がスピーディーかつ複雑に絡み合っていくから、読みながら、この先、主人公たちがどう絡むんでいくのか、どんな展開、結末がまっているのか、本当にハラハラドキドキの連続だった。
マリアビートルの好きなキャラクターは?
登場人物で、個人的に好きなキャラクターは、木村雄一、檸檬、木村茂(しげる)。
基本的に、不器用だけど男気のあるキャラが好き。
檸檬は、機関車トーマスおたくなところが、お茶目だったよね。
木村雄一は、アル中の元・殺し屋という設定だけど、息子の渉(わたる)を思う気持ちは、同じ親として非常に共感できるし、応援したくなった。
「王子に負けるな、おじさん!」
って感じで(笑)
それだけに、主人公5人(木村・蜜柑・檸檬・天道虫・王子)の中で、一番最初に、脱落したのには、ちょっとショックだった。
前作「グラスホッパー」では、鈴木・鯨・蝉・槿の中で、蝉が意外とあっさり終盤で脱落したように、
今回も、当然、誰かが脱落し、誰かが生き残るのだろうとは思っていて、木村は、終盤まで残るかと思っていたんだけどな。
結果的には、木村の章は、木村雄一から、父・木村茂と母・晃子にバトンタッチされ、ああ、そうきたか!と驚いた訳だが。
物語の冒頭から、木村雄一の回想シーンで、木村の父母、渉(わたる)にとってのジジババが、結構、登場してくるので、物語の後半で、どんなふうに絡んでくるのか興味深かったけど、まさか、父・茂が、寝起きの悪い「伝説の殺し屋」だったとは。
これは、誰も驚いたと思う、本作の一番のサプライズではないかな。
木村茂と晃子夫婦が、水沢江刺駅から、東北新幹線バトルに、まさかの参戦!
木村茂は、その登場の仕方も「いぶし銀」だけど、新幹線の座席で、王子と対峙した時の、行動や発言が際立っていたな。
それまでは、海千山千の木村雄一、蜜柑、檸檬、天道虫が、中学生の王子に、いいようにあしらわれてきて、読んでいるこっちとしては、王子に対するイライラやむかつきがMAXに達していたからね。
木村茂が、年長者としての威厳を保ってくれたのは、スカッと胸をなでおろす気分だった。
さて、物語を読み終わった後に、真っ先に気になるのが、王子の最後はどうなったのか?だと思う。
これについては、本編でヒントが出ているんで、考察してみたい。
マリアビートルの「王子」の最後は?
以下、伊坂幸太郎の「マリアビートル」のネタバレを含むので、
まだ読んでいない場合は、ご注意!
さて、王子は最後にどうなったのか?
という疑問について、考えてみたと思う。
物語の最後、東北新幹線の一件から2カ月がたった頃、天道虫こと七尾を、真莉亜の会話で、王子のその後のことに触れている。
仙台湾で発見された身元不明の‷どざえもん„について…
七尾「それが、あの中学生じゃないのかな」
真莉亜「そうかもしれないし、違うかもしれない」
と、何ともあいまいな表現。
ここで、物語で亡くなった人物【ほぼ確定】を、順番におさらいしてみよう。
- 峰岸の息子
- 狼
- 檸檬
- スズメバチ(車内販売の女)
- 蜜柑
- 王子の手先(病院の男)
- 峰岸良夫
このように7人の名前が挙がる。
物語のタイトルにもなっている「マリアビートル」は、本編で、押し屋の槿(あさがお)が登場する章で説明があるように、「てんとう虫」のことを指している。
マリア様の7つの悲しみを背負って飛んでいく。
だから、てんとう虫は、レディビートルと呼ばれる。
という表現がされている。
ここから、察するに、「マリアビートル」の中で、亡くなった人物は7人ではないかと推測できる。
そう考えると、先ほどの7人がそうで、王子は当てはまらないのか?
つまり、生きている、とも捉えることができる。
もしくは、亡くなった人物を、東北新幹線(ホームを含む)に絞った場合は、
王子の手先(病院の男)が除外されるので…
- 峰岸の息子
- 狼
- 檸檬
- スズメバチ(車内販売の女)
- 蜜柑
- 峰岸良夫
となり、最後の7人目が王子?とも捉えれる。
ということで、結論としては、どちらともとれる、ということ。
なんじゃ、そりゃ?
とツッコミを入れないで頂きたい。
小説とは、得てして、そういうものでしょう。
読者それぞれが、どう受け止めるか、含みを持たせて終わっているんだと思います。
いずれにしても、木村茂・晃子夫婦が、その後、王子にお仕置きをしたのは間違いないでしょう。
王子の安否は定かではないが、木村雄一・渉親子が無事だということが分かり、読者としては、さんざん王子にむかっ腹を立てたけど、最後は、少しは胸がすく思いになったのではないだろうか。
読み終わった後、アマゾンのレビューで、それぞれの感想を読んでみるのも面白いですよ。
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これからも伊坂幸太郎の小説を、どんどん読んでいこうと思います。