戸籍もなく、学校に行くこともできない…。
健康保険に入っていないため、病院で診てもらうこともできない…。
そんな状況の中、逞しく歌舞伎町で生き抜いてきた少年少女たち。
しかし、先の見えない暮らしに対する不安や絶望から、
新宿浄化作戦を行った都政に対する報復として、‶都庁爆破テロ〟を実行することを決意する。
自分の子供が、彼らのような状況に置かれたとしたら、どうだろうか?
今の日本で、当然のごとく日本人として生まれた我々としては、なかなか想像ができないだろう。
ただ、何不自由なく暮らしていること、当たり前のように学校に通えること、
子供の医療費がただであることなど、日本の教育環境や手厚い社会保険があることに感謝したくなる。
もちろん、税金をはじめとして社会保険料を我々が払っているのだから、その恩恵を受けるのは当然と言えばそうだが、
世界を見渡してみれば、そうではない国がまだまだあふれている。
彼らの‶都庁爆破テロ〟という無謀と思える計画を、織田は当初「止めるべきだった」と思っていた。
なぜなら、妻子を奪われた地下鉄サリン事件と同じような惨状が引き起こされるから。
それでも、尾田は、家族のような存在になっていた少年たちを失いたくない、
という思いからテロに加担することを決意する。
彼らがテロを実行すべく都庁の下見に行くくだりで、いかに都庁がテロに対して脆弱な警備体制かを指摘している。
タイトルにもあるように、この‶都庁爆破テロ〟は、
少年たちが、9・11アメリカ同時多発テロ事件を目の当たりにしたことから発想が生まれている。
我々日本人は、9・11テロを、対岸の火事のように傍観してきた。
世界貿易センタービルのツインタワーが、ハイジャックされた旅客機に突っ込まれ、
爆発炎上し、崩壊するショッキングな瞬間を目の当たりにしたにも関わらずだ。
あのテロ以来、日本でも、各地でテロ対策が敷かれるようになった。
しかし、日本は平和な国であるがゆえに、喉元過ぎれば熱さを忘れる。
そうした現状に対し、馳星周は、少年たちにようる‶都庁爆破テロ〟計画という題材で、痛烈に批判したのではないだろうか。
爆破テロが決行されるのか、失敗に終わるのか。
クライマックスの最大の焦点は、全く予想が出来なかった。
あの結末は、馳星周作品の中では、一見、救いがあるようにも思えるが、
その後の顛末を考えれば、負の連鎖が、さらなる怒りや怨恨を呼ぶ絶望的な終わりでもある。
その後の織田の人生は?
少年たちの処遇は?
都庁にいた人たちは?
考えれば考えるほど、答えが見えてこない。
しかし、これは小説の話にとどまらず、世界では、この瞬間にも現実に起きている現在進行形の話である。
この「9・11倶楽部」は、家族とは何かというテーマに加えて、世界平和への問いかけが為されているのではないか。
極上のエンターテイメントでありながら、こうした普遍的なテーマを投げかけてくる馳星周作品。
だからこそ「やめられない止まらない」のである。
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TVディレクター・ジン報道番組の制作を担当、4歳娘と1歳息子のパパです。料理レシピや全国食べ歩きグルメ、子育て情報、ONE PICEネタ、iPhone関連など、知って得する生活情報を記事にしています。
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2017年4月10日 コメントはありません。 書籍 馳星周