9・11倶楽部【馳星周】感想とあらすじ<ネタバレ注意>

馳星周「9・11倶楽部」の感想 1.少年少女たちの巡り合い

私が、馳星周の小説が大好きなのは、行きつく暇もないほどのスリリングな展開が続き、
あっと間に、物語に引き込まれてしまう点にある。

それは、馳星周の魅力ともいえる、ぶっとんだアウトローやバイオレンスもさることながら、
著者が、その時に取り上げたテーマについて、深い調査と取材を重ねているので、
主人公の職業についてや、現実社会で起きた事件・事故などや、史実についての勉強にも非常に役立つからである。

「9・11倶楽部」の場合、まず、物語の序盤では、
第一に、主人公・織田の職業である救命救急士という仕事が、どんなものかが分かる。

もちろん、救命救急士の仕事は、小学生でも勉強することだが、そんなことを言っているのではなく、
救命救急士という、子どもが憧れる「かっこ良い職業」が抱える暗い側面や、医者との格差などが、リアルに伝わってくる。

たとえば、物語の冒頭、救急車で現場に出動した織田が、車内で本部と連絡を取り、担当指導医に指示を仰ぐシーンが印象的だ。

経験不足の医者は、腹の底で小馬鹿にしつつ経験豊富な現場の救命士にすべてを投げ出すことが多い。

役に立たない医者より、なにもゆるされない救命士という存在を歯噛みする

 

救命救急士は、あくまで、患者に応急処置を施し、いち早く病院に連れていくことが仕事であり、
それ以上でもそれ以下でもないということ。とにかく、やれることが限られているらしい。

私は、数ページ読んだ時点で、「ああ、この『9・11倶楽部』は絶対に面白いな」と確信した。

そして、その救急現場で出会ったのが、中国残留孤児2世の少女・笑加や、少女と共に暮らす少年たちだった。

彼らは、不法滞在として日本で働いていた中国人を親と暮らしていたが、
新宿浄化作戦で、親が中国に強制送還され、日本に取り残され、新宿でひっそりと共同生活を送っていた。

警察に知られれば、戸籍のない彼らも、中国に帰されることにある。
しかし、生まれも育ちも日本だが、日本人ではないという存在である彼らは、
かといって中国が故郷でもない、特別な存在…。

新宿浄化作戦は、2004年に、当時の石原慎太郎知事の意を受けた警察官僚出身の竹花豊副知事の主導によりスタート。
暴力団や非合法な性風俗の摘発、不法滞在外国人の追放などが行われた。(巻末の解説より)

新宿歌舞伎町界隈の治安が良くなった効果もあった中、
時の権力者たちが見て見ぬふりをしていた〝ひずみ〟にスポットライトを当てるところが、いかにも馳星周らしい。

彼らは、過酷な境遇ながら、歌舞伎町で野生動物の如き嗅覚で生き延びてきた。

そうした少年たちの逞しさは、現代の日本では薄れてしまった部分であり、だからこそ、読んでいて面白い。

地下鉄サリン事件で家族を失った織田は、それ以来、孤独と共に生きてきたが、
不遇な少年少女と出会うことで、父親としての自分を次第に思いだしていくのである。

スポンサー リンク

当レストランのシェフ


TVディレクター・ジン
報道番組の制作を担当、4歳娘と1歳息子のパパです。料理レシピや全国食べ歩きグルメ、子育て情報、ONE PICEネタ、iPhone関連など、知って得する生活情報を記事にしています。
>>詳しいプロフィール
follow us in feedly

記事のカテゴリー

お気軽にコメント下さい